准看護師、特別養護老人ホーム(特養)のお仕事は?
少子高齢化が急速にすすむ現在、看護師の需要は医療機関のみならず、老人ホームや介護老人医療施設などにも広がりを見せています。
それにともない、訪問介護や認知症ケアといった介護分野に興味をもち、特別養護老人ホームなどの公的な介護施設への就職を希望する看護師の方も増えてきています。
ここでは、意外に認知度が低い特別養護老人ホームに関する基礎知識と、実際に行われている業務などについてご紹介していきたいと思います。
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<目次>
◆特別養護老人ホームとは?
◆特養で働く准看護師の仕事とは?
◆特養で働くメリット・デメリット
-メリット
-デメリット
特別養護老人ホームとは?
皆さんは、特別養護老人ホームと民間の有料老人ホームの違いについてご存じでしょうか?どちらも高齢者の介護をになう施設という部分では同じですが、運営主体や運営目的などの点が異なります。
特別養護老人ホームは、地方自治体や社会福祉法人が運営する公的な介護施設です。民間の老人ホームとの一番の違いはここにあると言えるでしょう。
特別養護老人ホームは「特養」とも呼ばれ、月額の利用料が安く(月額約5~15万円程度)や入居時費用のハードルも低いため、高齢者施設を探す人方々にとって経済的なメリットの大きな施設となっています。
しかしながら、申込者・待機者数が非常に多いため、入所を希望すれば誰でもすぐに入所できるという施設ではありません。特養の待機者数は全国で約40万人にものぼり、施設によっては入所まで数年待ちというところもあります。
また、入所対象も民間の老人ホームよりも少々狭く、対象となる条件には
・要介護1~5の認定を受けている
・身体、精神の障害のため常に介護が必要かつ在宅介護が困難である
・65歳以上
といったものがあります。また、入所は申込み順ではなく、寝たきりや要介護度が高い方といった緊急性が高い方から優先して行われるため、申込みから入所まで数ヶ月~10年近くかかる場合もあります。
特養で提供されている主なサポートは、食事や排泄、入浴などの介助や日常生活援助、自立支援。機能訓練、レクリエーションなどがあります。
医療体制においては、実施できる医療処置や医療サービスが限定されており、夜間の緊急対応や常時医療処置が必要な方への対応などについては、民間の老人ホームに一歩遅れをとる一面もあります。
それだけに、日常における健康管理や服薬指導などの重要性が高く、病気の予防、衛生管理なども含め、看護師の業務は責任の重いものとなっています。
余談になりますが、特養と似た介護施設に「介護老人保健施設(老健)」というものがあります。こちらは自立支援を主な目的とした施設となっており、入居者は数ヶ月~数年で退所するのが基本となっています。これに対し、特養は終身にわたって援助し続けるという違いがあります。
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特養で働く准看護師の仕事とは?
民間病院勤務の看護師の場合、点滴などの医療処置を行う機会が日に何度もありますが、特別養護老人ホームで働く看護師が医療行為を行うことは、緊急時を除きほとんどありません。
その理由は、特養勤務の看護師がになう業務の中心が、施設入所者の健康管理にあるからです。具体的な仕事内容、業務内容は各施設によって異なりますが、共通する代表的な仕事には、次のようなものがあります。
・バイタルチェック
・検温
・薬の管理、服薬指導
・施設の衛生管理、伝染病の予防
・協力医療機関との連携
・点滴、経管栄養の注入
・入居者急変時の対応
・機能訓練、リハビリ補助
これらは看護師が主体となって行う業務ですが、施設によっては、食事や入浴・排泄の介助、歩行補助などの介護業務まで担当する場合があります。
中には介護業務に追われてしまい、看護師としての業務を十分に行うことができないという方もいらっしゃいますので、業務の分担や区入りについては、入職前に十分確認しておくことをおすすめします。
また、特養に場合は医師が施設内に常駐していないため、看護師の医療面に関する責任は重大です。点滴や注射といった医療処置スキルの高さよりも、入居者の体調管理や健康状態を把握し、必要に応じて適切に対応できる判断スキルの方が重視されるということを、是非心に刻んでおいて下さい。
特別養護老人ホームにおける業務・勤務体制について、ひとつ気をつけておきたいのが、夜間の勤務についてです。
特養は24時間介護スタッフが常駐するのが基本となっていますが、看護師に夜勤があるかどうかは施設によって異なります。日勤のみのところもあれば、施設での夜勤があるところもあり、中には「夜勤はないがオンコール体制がひかれている」なんて施設もあります。
特養や老人ホームには夜勤がない、というイメージを持つ方も多いようですので、入職前に夜間の業務について確認しておくことをおすすめします。
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特養で働くメリット・デメリット
メリット
- ゆったりとした職場環境で働ける
- 入居者とじっくり向かい合い、細やかなコミュニケーションがとれる
- 転職の場合、給与、待遇が上がるように注意をしなければいけない
- 病院と比較すると、土日祝日などの休みが取りやすい
特別養護老人ホームは、病院のような「治療を行う施設」ではなく、老後を穏やかに過ごすための「生活の場」です。利用者の方が毎日心安らかに楽しく過ごせるよう支援する施設なので、看護師も病院勤務ではなかなか得られないメリットを感じることができます。
また、特養の看護師が行う医療行為は必要最低限のものとなるため、ブランクのある潜在看護師の方や、大学病院出身で医療スキルを身に付ける機会がなかった方などでも勤務することができます。
デメリット
- 看護師としてのスキルや知識を磨けない
- 介護スタッフとの連携が難しい
- 新卒、新人での入職は困難
特別養護老人ホームにおける看護師の主な役割は、入所者の健康管理や協力医療機関との連携などになります。そのため、医療処置の技術を磨いたり、最先端の医療に接したりといった機会を得ることが難しいというデメリットがあります。
病院勤務の場合は、研修や勉強会、医師の直接指導などを受けられるケースもありますが、特養では施設側からそういったチャンスを与えられることはまずない、ということを心に刻んでおきましょう。
また、特養は家庭的な雰囲気を大切にしている所が多く、病院勤務特有の忙しさやスピード感とは無縁です。そのため、一度特養の業務の流れになれてしまうと、病院勤務に戻った際に苦労するという声も多く聞かれます。
もう一つのデメリットとして、介護スタッフとの連携が難しいというものが挙げられます。
特養では、介護士や理学療法士、作業療法士などと連携をとりながら業務を行うことになりますが、施設によってはそれぞれの業務の境界線が曖昧で、業務分担がうまくいかずにストレスが溜まる場合があります。
お互いの仕事の範囲や役割の区切りがハッキリしていないと「看護師のくせに介護の業務に口を挟まないで欲しい」「看護や医療の専門知識がないのに、看護師業務に踏み込んで欲しくない」など、スタッフ同士で不平不満を溜め込む状況ができてしまう危険性があります。
こういった問題は、程度の差こそあれ、どのような特養にも見られるものですので心に留めておいて下さい。
特養のメリット・デメリットを挙げてきましたが、これらについては入職しないと実感できない、把握できないといった性質のものでもあります。
就職・転職前にこれらの点について確認したい時は、思い切って施設に直接問い合わせるのも一つの手ですが、特養の内情などに関する情報を豊富に持っている、看護師専門の転職サイトを活用するのがおすすめです。
転職サイトの中には、無料でキャリアアドバイザーへ相談できるところが数多くありますので、まずは気軽に相談してみると良いでしょう。