准看護師、クリニックへの転職の注意点は?
准看護師の職場として「クリニック」があります。クリニックではたくさんの准看護師が活躍していて、近くに住んでいる人たちの健康維持のために不可欠な存在となっています。
ここでは、クリニックの仕事について解説し、転職する際の注意点についてお話し致します。
クリニックとは
まずクリニックでは准看護師がどのような仕事をするのか説明します。
クリニックと病院の違いって?
クリニック(診療所)は、病床(入院用のベッド)がないか、19床以下の医療機関を言います。皆さんのご近所にある「●●クリニック」や「△△診療所」と言ったいわゆる「町医者」は入院設備がないところが多いですよね。こうしたところはクリニックと考えていただいて構いません。病床が20以上の医療機関が「病院」になります。
その他、病院の場合、医師3名以上、看護師(准看護師)1名以上、薬剤師1名以上などがいることが必須ですが、クリニックの場合は医師1名以上の他は条件がありません。極端な話、医師が1人で全てを行っても良いのですが、実際は複数名の看護師の手を借りて医療行為を行います。
クリニックで働く准看護師の仕事
クリニックでは正看護師と准看護師で仕事内容を分けることはまずありません。同じ業務を行うと思ってください。具体的な業務は以下になります。
・診療介助
医師の医療行為をサポートします。注射を打つ、採血をする、点滴を行う、血圧を測るなど患者さんへの処置に加えて、医療器具の準備、補充、洗浄、消毒などを行い、すぐに使えるように医師をサポートします。
・クリニックの雑務
専門の医療事務の人を置いていないクリニックの場合、会計や受付などを行うこともありますし、クリニック内の清掃などの雑用を行うこともあります。医療・看護行為だけしていれば良いと言うわけではありません。
・夜勤等入院患者への対応(入院設備があるクリニックの場合)
大病院ほどではありませんが、入院患者さんがいれば夜勤等の対応をする必要があります。ただ、入院設備があることと実際に入院患者がいることは別で、ほとんど入院措置を取らないクリニックも多いのです(入院が必要な患者さんは大病院へ転院させます)。
クリニックでの勤務時間
入院施設がない、入院患者がいないクリニックの場合、大前提として夜勤がありませんので、比較的働きやすい環境が用意されています。
一般的な勤務時間
午前診療:9時前後~12時、13時前後
午後診療:14時前後~18時前後
午前診療と午後診療の間はお昼休みになります。急患などがなければしっかりと休憩を取ることが可能で、バタバタとすることは少ないです。診療前の準備や診療後の残業も多少ありますが、それでも深夜まで残るということはほとんどありません。
また休日ですが、救急患者の受け入れなどもないため、定休日に確実に休むことができます。年に数回ある休日緊急医の日は出勤になりますが、前もって分かっていますので、予定は立てやすくなっています。
大きな病院と比べると、残業が少なくしっかり休憩も取ることができ、休日出勤などもほとんどありません。ハードワークにならず、自分の時間を大切にできるのがクリニックの特徴です。
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クリニックのメリット・デメリット
このような特徴があるクリニックに勤務することのメリット、デメリットについて考えてみましょう。
クリニックのメリット
・残業が少なく夜勤がない
上で書いたように入院患者がいなければ、夜勤をする必要がありません。勤務時間も固定されるので自分の時間がとりやすく、スケジュールが立てやすくなります。
・近所にあると通勤時間が短い
クリニックは皆さんの家の周りにたくさんあります。近所のクリニックで働くことができれば移動時間も少なく、家庭生活との両立も容易です。
・休日が固定されている
緊急対応を行うことはほとんどありませんので、指定された緊急医の日以外は確実に休むことができます。病院のように休日出勤がないのが魅力です。
・専門性を深めることができる
「眼科」「美容外科」など単科クリニックであれば、その診療項目を専門的に学ぶことができます。大病院のように異動などで別の仕事を行うことはありません。
クリニックのデメリット
一方でデメリットも存在しています。
・収入が低くなりがち
夜勤や休日出勤がないと言うことは、それに該当する手当も出ません。したがって、収入は病院勤務と比べて低くなりがちです。
・社会保険、福利厚生が不十分
クリニックの場合医師(院長)による個人経営のケースが多く、社会保険や年金、福利厚生があまり整備されていない可能性があります。大企業が大病院だとすると、クリニックは中小零細企業であり、色々な点で制度が完備されていない可能性があります。
・年休などが取りにくい
定休日は休めるのがクリニックの長所ですが、少ない人数で診察を行っているため、有給休暇などが取得しづらい雰囲気にあるようです。自分の代わりの人がなかなか見つからないわけですね。
特に繁忙期(眼科や耳鼻科ならば花粉症の時期、内科ならばインフルエンザの流行期など)は厳しいかもしれません。事前に同僚とも調整して、計画を立てることが必要になります。
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メリットにもデメリットにもなりうる要素
一概にメリットともデメリットとも言えない要素がクリニックにはあります。
それは
・人数が少ない
・経営者(院長)の意向が反映されやすい
の2点です。
一緒に働いている人と気が合う場合は、すごくアットホームで働きやすいのですが、逆だと異動などで別の部署に行くことができないので、人間関係に苦しむことになります。
また、大病院の場合は経営会議などで病院の方針が決定されますが、クリニックだと院長の判断で色々なことが決まってしまいます。急に就業規則が変わることもあり得ますし、気に入った人を優遇する、能力ではない面で待遇に差がつけられるなど、情実人事があり得ること言うことです。
自分がその恩恵を受けられる立場ならば良いのですが、逆だとやはり働いていてキツイことになります。経営手腕に長けている院長であれば、収入も大病院に劣らない、それ以上と言うクリニックも存在します。
つまり、クリニックは「狭い」世界であるがゆえ、そのウェットな人間関係を受け入れられるかどうか、その時の人間関係がどうなるのか、「出たとこ勝負」の面があると言うことです。
准看護師も正看護師と同じような待遇かどうかもクリニックによります。良い経営者であれば同等に評価してくれますし、そうではない場合低い待遇(正看護師と准看護師の差が大きいと言うよりも、正看護師が准看護師と同じ低い待遇であるケースが多いようです)で働かされるところもあります。ここも経営者次第と言う面が大きいです。
クリニック勤務の特徴 まとめ
- 労働時間が短いがその分収入が少なくなりがち
- 働いている人数が少ないので、その中での人間関係が重要になる
- 経営者(院長)の意向が反映されるので、その人次第の面が大きい
クリニックへ転職する場合の注意点
労働時間や休日だけを考えるのであれば、近所のクリニックに応募すれば良さそうですが、上で書いたように狭い人間関係であるがゆえの要素が大きく、やはり働きやすい環境を選ばないと続きません。
しかし、クリニックが定期採用を行うことはあまりなく、欠員補充と言った形で求人を出す場合がほとんどです。募集された求人にそのまま応募するのは事前情報もなくリスクも高そうです。どうすれば良いのでしょうか。
1.できるだけ募集要項を調べ情報収集する
看護師業務を行うはずがほとんど雑用で事務員と変わらなかった、などとならないように事前に十分に情報収集をしたいものです。短期に求人を繰り返しているようなクリニックは、人が定着しないと言うことですから、人間関係や院長に何らかの問題がある可能性があります。
そうしたことが分かれば、事前に「地雷」を避けることができます。ただし、そうした情報が表に出ることは少なく、分からない場合が多いのです。博打で就職するのはやはり避けたいものです。何か良い方法を見つけたいものです。
2.転職サイトなどで求人内容を把握する
自分の力ではクリニックの内情を調べるのは容易ではありません。そこでハローワークなどで担当者に聞くのも1つの方法です。短期に求人を繰り返しているのであればやはり問題だと認識できます。ただし、ハローワークの求人は無料で出せるため、ハズレも多く混じっていると言われています。
そこでもう1つの方法として看護師専門の求人サイトの活用があります。こちらは、准看護師でも利用できますので安心してください。「病院」「クリニック」など規模ごとに求人がまとまっていて、簡単に検索ができます。近くのクリニック求人もこれならば容易に探すことができます。
給与や休日、勤務時間などもしっかりとまとめられていて、肝心の入院設備があるかどうかも判断できます。夜勤のないクリニックもフィルタにかけることで見つけられます。人間関係などの要素は、完全に把握することはやはり難しいですが「平均在職年数」などから定着しやすいところなのかどうか判断できます。
こちらを活用することで、不安要素を少しでもつぶして、ご自身の希望に合ったクリニックを見つけることが可能になります。運の要素はできるだけ減らしましょう。
准看護師のクリニックへの転職 まとめ
- クリニックは入院施設がない、あるいは入院ベッドが少ない医療機関である
- 入院患者がいなければ夜勤や休日出勤はない
- 定時勤務が可能で、決まった日に休める
- 夜勤手当などがない分収入は低くなりがち
- 経営者の意向が大きく、それ次第で環境が大きく変わる
- 狭い人間関係がプラスにもマイナスにも働く
- 求人が出にくく、情報収集が難しい
- 転職サイトの活用である程度不安要素をつぶすことが可能